認知症の方の家族の責任
相続・遺言・成年後見を中心に葛飾区、江戸川区地域密着で業務を行っております司法書士の古川です。
認知症患者が徘徊中に電車にひかれて死亡したことから、鉄道会社から認知症患者の家族に対し振替輸送費や人件費等の損害の賠償請求がされ、今年の4月に、認知症患者の妻の責任が認められる判決が下され、とても話題になりました。
認知症患者の方を介護しているご家族にとっては、とても不合理に感じられる判決かと思いますが、下記の記事ではなぜそのような結論になったのかを考察されております。
少し古い記事ですが、認知症患者の方を介護されているご家族にとってはとても大事な問題ですので、ご紹介させていただきます。
http://www.yomiuri.co.jp/otona/life/law/20140708-OYT8T50173.html
当該判決では認知症のご家族の監督義務者としての責任を認めています。
日本の法律では、「精神上の障害により自己の行為の責任を弁識する能力を欠く状態にある間に他人に損害を加えた者は賠償責任を負わないものとする」とされており、認知症患者等のいわゆる責任無能力者については、他人に損害を与えたとしても賠償責任を負わないことになっております。
しかし、これでは責任無能力者により損害を受けた被害者の保護が図れなくなってしまいます。
そのため、このような場合には「監督義務を怠らなかったとき」又は「監督義務を怠らなくても損害が生ずべきであったとき」を除き責任無能力者の監督義務者が責任を負うこととされております。
要するに監督義務者の責任とは、責任無能力者の保護と責任無能力者により損害を受けた被害者の保護の双方を両立させるための責任なのです。
本判決では、様々な具体的事情を考慮した上で認知症患者の妻については監督義務を怠らなかったとまでは言えないと判断されています。
お読みいただきありがとうございました。