成年後見人にはどのくらいの費用がかかる?報酬の相場を解説
認知症などにかかって自分では適切に財産管理ができなくなってしまったら、成年後見制度を利用して後見人に財産管理してもらうことがあります。
ただ、成年後見人をつける場合、後見人に費用を支払わなければならないケースがあります。
具体的には、どのようなケースでどのくらいの費用がかかるのでしょうか?
今回は、成年後見人の報酬相場について解説します。
1.成年後見人の費用が発生する場合
年をとって認知症が進行した場合など、自分では適切に財産管理ができなくなることがあります。
放っておくと悪徳業者などにお金をだまし取られてしまうおそれもあるので、対処が必要です。
このような場合、よく利用されるのが成年後見制度です。
成年後見人をつけたら、その後は成年後見人が本人の代わりに財産を管理してくれますし、本人が勝手にした行為も取り消すことができるので、本人が不利益を受けることを防げるようになります。
ただ、成年後見人をつけると、成年後見人に対する報酬が発生するケースがあります。
それは、弁護士や司法書士、社会福祉士などの専門家が成年後見人になった場合です。
これらの専門家は、ボランティアで成年後見人になっているわけではないので、後見業務に対して報酬を支払わないといけません。
これに対して、本人の親族などが後見人になる場合には、必ずしも報酬が発生するとはかぎりません。
親族であっても報酬請求をすれば受け取ることができますが、親族が後見人になる場合には、実際には支払われていないケースが多くなっています。
以上のように、成年後見人の費用が発生して問題になるのは、主に弁護士などの専門家が後見人になる場合であると理解しておくとよいでしょう。
2.成年後見人の報酬の決まり方
では、成年後見人の報酬はどのようにして決めるのでしょうか?
弁護士などが費用設定していると思われるかもしれませんが、そうではありません。
成年後見人の報酬は、家庭裁判所が決定します。
半年や年に1回程度、成年後見人が家庭裁判所に対して財産状況や後見業務の内容を報告しますが、このとき同時に報酬請求をします。
報酬請求があると、家庭裁判所は提出された書類から後見人に対する妥当な報酬額を決定し、報酬決定の審判書を後見人に送付します。
すると、後見人は、その内容にしたがって報酬を受け取ることができます。
このように、成年後見人の報酬は家庭裁判所が決定するので、費用の高い安いはありません。
そういった意味では、公平な報酬決定の制度だと言えるでしょう。
3.成年後見人の報酬の相場
家庭裁判所が成年後見人の報酬の相場を決めているなら、具体的にいくらになるのかが気になるところです。
これについては、全国各地の家庭裁判所によって金額が異なります。
というのも、全国には物価の差がかなりあるので、地域に応じた決定が必要になるからです。
ただ、代替の相場としては、月額2万円~6万円程度となります。
また、当然ながら管理している財産の額が大きいほど報酬は高額になる傾向があります。
たとえば、管理している財産の額が1000万円程度であれば報酬は月額2万円程度になることが多いですが、財産額が5000万円を超えてくると、報酬額は月額4万円以上になることが多くなります(先述の通り、各地の裁判所によっても違いはあります)。
4.特別な事情がある場合の付加報酬とは
以上が成年後見人の基本的な報酬の相場ですが、後見人が特別に苦労した業務活動をした場合には、付加報酬が認められることがあります。
たとえば、後見人が被後見人のために訴訟を起こして勝訴し、財産額を増加させた場合には、増加させた金額に応じて付加報酬が認められることがあります。
また、不動産を売却することによって現金資産を増やし、被相続人の介護のために使うことができた場合などでは、50万円程度の付加報酬が認められることなどがあります。
これらの付加報酬についても、成年後見人が家庭裁判所に対して提出する報告書における内容から家庭裁判所が判断して決定することになります。
5.成年後見人の費用はどこから支出されるのか?
以上のように成年後見人が選任されると、基本的に費用が発生するので、その費用がどこから支払われるものかが気になる方がいるでしょう。
成年後見申立によって申立人が高額な費用を負担するなら、申立をやめておこうと考えることもあります。
成年後見人の報酬は、本人の財産から支払われます。
そこで、申立人が個人資産から負担する必要はありません。
成年後見の申立をしても、後見人の報酬を自己負担する必要はないので、その点は安心して大丈夫です。
また、本人の資産から費用を支払えない場合には、各地方自治体における「成年後見制度利用支援事業」を利用して支払うこともできます。
まとめ
以上のように、成年後見人の費用はさほど高額なものではありませんし、本人の財産から支払われるので申立人に負担はありません。
安心して、後見制度を利用すると良いでしょう。