成年後見人の医療行為の同意権
成年後見の仕事をしていると、ご本人に支援する親族等がいない場合には、医療機関から医療行為についての同意を求められることがあります。
ご本人は判断能力が衰えており、ご本人からの同意を得ることが難しいために、医療機関としても誰かの同意を得ておきたいというのがあるのでしょう。
しかし、成年後見人には、ご本人に関する財産管理や医療契約の締結等の幅広い代理権がありますが、医療行為の同意権はありません。
医療行為を行うかどうかについてはご本人の、身体や命に係わる重要な問題ですので、親族ではない成年後見人に医療行為の同意権がないことはある意味当然だと思います。
ただし、これは実務の現場ではたびたび問題を引き起こします。
例えば、ご本人に身寄りがなく、自力で栄養を取れなくなってきた場合に胃ろう(口から食事のとれない人、飲込む力の無い人のために、直接、胃に栄養を入れるためのおなかに小さな口を作る手術)をしないと老衰で亡くなってしまうような場合に、胃ろうは医療行為ですので、医療機関は親族の同意を得ようとします。
しかし、ご本人に身寄りがなく同意を得る人がいない場合に、後見人がついている場合には、医療機関は後見人から同意を得ようとします。
そして、後見人に医療行為の代理権がないことがわかると、「何が後見人だ。医療行為を同意する権限もないのか」と怒鳴りつけてくる医者の先生もいました。
医療機関としても何かあった時に責任を取りたくないという気持ちからそのような言動になったのだと思います。
私には医療の知識があまりないため、たしかなことは言えませんが、現時点では、このような場合には、ご本人が延命治療を明確に拒否するような文書等を残していたりしない限りは、命をつなぐための医療行為を行ってもらう他ないのかと感じていいます。